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ペレットストーブを設置して後悔する要素9選
2025.02.27
ゆらめく炎、お部屋全体を包む暖かさ、日向ぼっこのように心地よい輻射熱……
ペレットストーブは炎のある暮らしを手軽に実現できる便利な暖房機ですが、一方で事前に理解しておかなければ「こんなはずじゃなかった!」と後悔するポイントも。設置してから後悔しないためにも、ペレットストーブの良いところだけでなく注意が必要なところや後悔する原因を把握しておきましょう。
ペレットストーブの正式名称は「木質ペレットストーブ」で、木質ペレットを燃料として燃やしてお部屋を暖めるストーブです。多くの機種は電気ヒータによる自動点火式で、内蔵された燃料タンクに補充したペレットが自動で供給され燃え続けます。点火や火力調整はボタンやダイヤルで簡単に操作できるため、初めての方でも手軽に使用することができます。もちろん家庭用の100V電源が必要ですが、燃焼中の消費電力は例えば「ほのか/山本製作所製」では約12~39W程度と少なく、電気代があまりかからないのも魅力です。
ペレットストーブの使用には家庭用100Vコンセントが必要です。
設置には壁に約140mmの穴をあける工事を行い、屋外から空気を取り入れ燃焼後の排気ガスを屋外へ排出するための給排気筒を施工します。排気は室内に出ませんので、お部屋の空気を汚さず定期的な換気を必要としません。可燃物との離隔距離や施工方法などはメーカーや機種ごとに異なりますので、詳しくは各メーカーの商品ページをご参照ください。
炎のある暮らしを手軽に実現できるペレットストーブには、多くの魅力があります。
ペレットストーブ最大の魅力は炎が楽しめること。運転中は絶えず炎が見えることで視覚的にも暖かく感じ、忙しい現代の暮らしの中でも非日常を感じリラックスできます。また炎の暖かさは自然と人を集め、家族団らんの中心となることでしょう。ワンちゃんや猫ちゃんはストーブの前が特等席になることも。
ペレットストーブは木を燃やした熱エネルギーのうち、約半分以上が輻射熱として室内を暖めます(当社調べ)。日光のような輻射熱は人の体だけでなく室内の壁や床も暖めるので、部屋が全体的に暖まり、体の芯からポカポカするような暖かさが心地よく感じられます。
ペレットストーブは、点火前の灰のお手入れやペレット燃料の補給に約5分ほど時間がかかります。手間はかかりますが、点火や火力調整はボタンやダイヤルで操作できるので、石油ストーブやエアコンといった家電製品のように一般住宅のメイン暖房として毎日お使いいただけます。
ペレットストーブは室内に水分を出さず輻射熱と温風で室温だけを上げるので結露ができません。しかしエアコンと同じように乾燥しやすいため、加湿器を置いたり洗濯物を部屋干ししたりして乾燥対策を行いましょう。特に豪雪地帯や寒冷地のユーザー様からは冬でも洗濯物がよく乾き助かるというお声をいただきます。
国産ペレットの原料は地域の間伐材や製材所のおが屑、虫の被害木など。家具や住宅建材として活用できない木材をペレットストーブで使用することで、各家庭での灯油や電気使用量を減らすことができ、海外からの灯油や石炭の輸入量を減らして国内・地域内でお金を循環させることができます。
燃料補給時に万が一手元が狂ってペレットをこぼしてしまっても、ほうきやチリトリで散らばったペレットを集めることができます。高齢者が灯油をこぼす心配がないようペレットストーブを検討される方も。
ペレットストーブをよく理解せず設置し「イメージと違った!」「そうとは知らなかった!」と後悔するケースも。実際にあった後悔について紹介します。
ペレットストーブには高気密住宅に対応しているタイプと、対応していない半密閉と呼ばれるタイプがあります。半密閉タイプの機種を気密性の高い建物に設置した場合、キッチンの換気扇をかけると火が不安定になったり、点火がうまくいかないなどの症状がでる場合があり、別の機種への入れ替えを提案されるケースもあります。住宅の気密性が高い場合には、高気密住宅対応の機種を選びましょう。
ペレットストーブを設置するためには、本体を設置する場所だけでなく可燃物との適切な離隔距離が必要となります。出窓やカウンターの下にぴったり入る機種を選んだつもりが「離隔距離をとる必要があり入らなかった!」とならないよう、設置場所はいくつか候補を用意しておきましょう。
ペレットストーブ本体は男性2人以上でないと動かせない重量の機種がほとんど。夏場は邪魔になるので外そうとしても簡単にはいきません。また設置の際には専門業者が排気漏れなどの事故がないよう注意しながら施工を行いますので、自分で外して再度取りつけると重大な事故に繋がる心配も。季節を問わず置きっぱなしにしてもよい場所をしっかり見極めましょう。
燃料である木質ペレットは、ほとんどが10㎏ごと袋詰めされて売られています。使用する量にもよりますが、1日0.5袋から多い方で1.5袋使用される場合もあります。定期的に配送してもらう購入方法もありますが、地域によっては自家用車でペレットストーブ取扱店に定期的に購入に行く場合もあるでしょう。湿気がなく、直射日光の当たらない屋内で約20袋前後保管できる場所があると安心です。だいたい6~7袋程度は積み上げて保管できますので、約1畳分ほどのスペースがあれば十分です。
ペレットを積み上げて保管している様子
炎が楽しめる暖房器具として最もイメージが強いのは薪ストーブでしょう。薪ストーブでは本物の炎で暖を取るだけでなく、炉内で料理をしたり、夏場には薪割りをするなどライフスタイル自体を一変させると言っても過言ではありません。しかしペレットストーブの場合には、炎はボタンやダイヤルで操作、炉内での料理はできず薪割りの必要もないので、薪ストーブと比較して物足りなく感じる方もいらっしゃるかもしれません。
薪ストーブでは薪に火が燃え移ってから徐々に火が大きくなり、落ち着くと熾火になっていくなど様々な炎の表情を楽しむことができます。時にはオーロラのような炎になることも。ゆったりと燃える炎の様子は、ずっと見ていても飽きません。
一方ペレットストーブの炎は、強制的に排気ファンで屋外で空気が排出される影響もあり火柱のような形状です。ペレットが出てきて炎が燃え移り、徐々に炎が大きくなってだんだんと落ち着いて…… 薪ストーブとは違った炎の様子を楽しむことができます。
ペレットストーブ「禅」の炎の様子
ペレットストーブは薪ストーブよりも暖かくない、と言われることがあります。それもそのはず。薪ストーブは煙突から屋外へ、電気を使わずに排気をスムーズに出すために260℃前後の排気温度が必要で、炉内も高い燃焼温度が必要となります。その分燃料となる木も一定量以上燃やす必要があり、木を燃やす量が少なすぎると煤が付着して煙道火災などの事故の原因になることも。
一方ペレットストーブは燃焼させるペレットの量は火力ごとに制御されており、さらに本体内部でなるべく熱交換して熱を室内に残すため排気温度は260℃以下と低くなっています。薪ストーブと比べてペレットストーブでは、そもそも木を燃やせる量が少なく設定されているといえるでしょう。
薪ストーブでは炉内や排気の温度を高く保つ必要があり、燃やす木の量も多く、本体や煙突から出る輻射熱で1軒丸ごと暖めることもできます。一方ペレットストーブは、薪ストーブに比べて燃やせる木の量が少なく、排気温度も低いので広いリビング1部屋を暖めるのに適していると言えるでしょう。
最近では薪ストーブを使っていたものの、年齢とともに薪を作るのが難しくなりペレットストーブの導入を考える方も増えてきました。お家の構造やお部屋の大きさなどにあう機種選び・設置場所の選定をするためにも、導入前にはペレットストーブ販売店へしっかり相談し、違いをよく理解しておきましょう。
ペレットストーブの多くは約25畳前後まで暖める暖房能力がありますが、設置する建物が断熱材のない構造であったり、木造ですきま風の入るような気密性の低い建物だった場合、いくらペレットを燃焼させても十分な暖房効果を発揮することができません。より高い暖房効果を得るためには、お部屋にあった機種選びだけでなく建物の気密性や断熱性能にも注意しましょう。
例えば約23畳前後まで暖められる「ほのか/PS-631F」の場合、最小燃焼で1時間あたり500ℊ、最大火力で1時間あたり1.4㎏のペレットを燃焼します。おそらく火をつけたては火力を高めにして、約1~2時間で部屋が暖まってくると火力を落として使っている方が多いのではないでしょうか。地域にもよりますが、平均的なペレットの使用量は1時間あたり約1㎏。1日に約10時間前後使用すると、約1袋(10㎏)使用するイメージです。
ペレット燃料は近郊にペレット工場があるかでも価格が大きく異なりますが、例えば1㎏80円で売られていた場合には、1日10時間前後使用してランニングコストは800円となります。ペレット燃料を使用した方がエアコンの電気代や灯油ストーブと比較して圧倒的に安い!というケースは少ないと思いますが、23畳前後の広い空間でより快適に、本物の炎を見ながら暖められるところがペレットストーブの最大の魅力です。
※燃料価格が10kgあたり800円で、中火力で使用した場合
ペレットストーブは炉内の灰受けだけでなく、内蔵された排気ファンや熱交換部分、排気筒内部にも灰が蓄積します。灰の蓄積は排気がでる時の抵抗になり、排気経路が詰まれば給気も必要量が取れず不完全燃焼を起こします。1シーズン使用したら、購入したお店にシーズンオフメンテナンスを依頼しましょう。
例えば排気経路が詰まったまま燃焼を続けたり、メンテナンスを怠ったまま使用を続けると部品の変形や故障要因となり、必要以上に部品交換が必要になることも。冬場はペレットストーブ販売店も繁忙期のため修理してもらえるまでに時間がかかりますので、一番寒いときにペレットストーブが使えず困らないよう、1年に1度のシーズンオフメンテナンスをしっかり依頼して実施しましょう。
異常燃焼した様子
ペレットストーブから出る音には以下のものがあります。
事前に把握せずに設置場所を決めると、意外と動作音が大きくテレビの音量を少し上げる必要があった、なんてことも。
なるべく音の静かなペレットストーブを選びたい場合、ファンの数や音、外装などに注意して機種を選びましょう。
まずは排気ファンの稼働音です。排気ファンそのものの稼働音にも注意が必要ですが、ダンパーで給気量を調整するタイプか、自動で火力にあわせてファンの回転数が制御されている機種かも注目しましょう。ダンパー式の場合、排気ファンは常に高回転しておりダンパーで給気量を調整するので、ファンの稼働音は大きくなりがちです。一方、火力にあわせてファンの回転数を制御する機種の場合は必要以上にファンが回転しないので、比較的静かな機種が多くなります。
次に温風ファンの稼働音です。温風は動作音だけでなく、直接体にあたると不快に感じやすいデメリットもありますが、部屋を早く暖めるメリットもあります。
温風が出る機種は、温風の強さにあわせてファンの稼働音も大きくなります。温風ファンのない輻射タイプの機種と比べると、どうしても稼働音が大きく感じられます。なるべく静かな機種を選びたい場合には、自然対流式・輻射式のストーブを選ぶか、温風がマイルドな機種や、とめた状態でも使用できる機種も確認してみましょう。
メーカーによっては稼働時の音をデシベル(dB)で表記している場合もありますが、人によっては高い音か低い音か、音の種類でも感じ方が異なりますので、カタログ表記だけで気になる動作音かどうかを判別するのは難しいでしょう。
ペレットストーブの機種選びで、最も後悔が多いのが動作音といっても過言ではありません。機種を選ぶ場合には、デザインやカタログ情報だけでなくショールームでしっかり実演している状態で見学し、時には静かな状態で音を確かめさせてもらいましょう。
ペレットストーブは自動で点火する機種の場合、点火動作に入ってから約3~5分で火が付きます。ポッと火が付くとそれだけで暖かく感じますが、実際にはペレットストーブ本体がしっかり暖まるまで時間がかかりますので、部屋が全体的に暖まるまでには約1時間程度かかります。
ペレットストーブを停止する際には、ボタン操作などで消火動作に入るとペレット供給が止まり、約5分前後で火種自体は燃え尽きてなくなります。しかしストーブ本体は熱い状態のため、約30分~1時間の冷却運転を行います。火種が消えれば、そこから再度点火することはないのでお出かけしても構いません。地震や非常時などはストーブを停止してもすぐにはストーブの稼働は止まりません。急にコンセントを抜いたり電源を落とすと、ストーブ本体が熱いまま冷却できず、燃料タンクに熱がかかり事故の原因にもなるのでやめましょう。
またストーブ本体はすぐには冷めないので、就寝の際には直前ではなく寝る30分から1時間前にストーブを停止しても暖かさがほっこり残ります。
ペレットストーブは暖まるまでも、冷めるまでも時間がかかるもの。1日に何度もつけたり消したりせず、なるべくつけっぱなしにすることで部屋をより暖かくすることができます。
シーズンオフメンテナンスや故障時の部品交換依頼先はペレットストーブを購入した取扱店です。ペレットストーブは年に1度のシーズンオフメンテナンスや、消耗部品の交換をしながら丁寧に使用すれば10年以上使うことができます。部品提供の保証期間が長いメーカーの機種を選べば、より長い期間使うことができます。
まずはペレットストーブを購入する取扱店とは10年以上のお付き合いになると、検討段階で念頭に置きましょう。
一部の家電量販店では他店で購入した製品も修理を受け付けてくれるサービスを行っています。また通販で購入できる商品もどんどん増えていますが、その感覚でペレットストーブを購入することには注意が必要です。
ペレットストーブは設置する際、取扱店から壁への穴あけ工事や正常な動作のための給排気筒プランニング、使いやすいペレット燃料の購入方法提案、使用予定のペレット特性に合わせた燃焼プログラムの設定などを行います。誤った工事方法や、排気がスムーズに出ていかない給排気筒のプランニング、燃焼プログラムにあわないペレットの使用は故障や住宅を痛めるトラブルに繋がるため、取扱店は責任をもって工事や提案を行います。
そのため自社で工事していないペレットストーブの修理やメンテナンスは、それまでの経緯や工事内容が不明であるため責任を持てず、基本的には対応を断られると想定しておきましょう。
10年以上のお付き合いとなる取扱店が良いお店かどうか、インターネットにはほとんど載っていないため調べることは難しいでしょう。不安な場合には、まずは購入を検討している機種を製造しているメーカーへ問い合わせてみるのもおすすめです。
どの取扱店から購入するかは見積価格だけではなく、自分と長期間お付き合いができるお店がどうか、実際に店舗にも足を運んで顔を合わせ納得してから選びましょう。
ペレットストーブには多少手間のかかる部分や配慮が必要な要素はありますが、炎の輻射熱による高い暖房能力と癒し効果などの魅力あふれる暖房器具です。自分と家族のライフスタイルや設置したい部屋、近隣の住宅への迷惑にならないかなど、慎重に検討してからペレットストーブを設置し、後悔しない炎のある暮らしを楽しみましょう。
執筆者|遠藤 (株式会社山本製作所 ペレットストーブ担当)
入社以来、10年以上に渡りペレットストーブメーカー営業担当としてペレットストーブに携わる。多くのお客様・取引先の声に耳を傾け、国産ペレットストーブでトップクラスの人気を誇る「ほのか(PS-631F)」や山本製作所100周年記念モデル「OU(PS-501FC)」の開発にも参加。昨年よりYouTube動画での情報発信に注力。「十分にペレットストーブを理解し、後悔の無い選択をして良いペレットストーブライフを送って欲しい」という想いから、メーカーとして偏りのない正しい情報を発信することにこだわっている。
コンパクトなサイズ感と足元温風吹き出しが人気のスタンダード機種。7色のカラーバリエーションからお好みの色を選べます。
● FF式 ● 温風ON/OFF切り替え ● 4段階の火力調整 ● 高気密住宅対応
暖房能力:最大14~23畳※
普遍的な佇まいのペレットストーブ。作為的な造形に頼らず、素材の持つ美しさと職人の手仕事にこだわることで、工芸品のような1台に。
● FF式 ● 温風ON/OFF切り替え ● 4段階の火力調整+AUTO運転 ● 高気密住宅対応
暖房能力:最大14~23畳※
世界的工業デザイナー・奥山清行(Ken Okuyama)氏主宰、KEN OKUYAMA DESIGNによるデザイン監修。鋳物で作られた世界的にも珍しい木質ペレットストーブ。
● FE式 ● 輻射式 ● 4段階の火力調整+AUTO運転
暖房能力:最大26畳※
最大暖房能力50畳の大型ペレットストーブ。事務所や教室など広い空間で活躍します。
● FF式 ● 4段階の火力調整 ● 高気密住宅対応
暖房能力:最大33~50畳※